Treatment

診療グループ

脊椎脊髄疾患・末梢神経疾患

脳神経外科は脳外科と略して呼ばれることが多く、脳を専門に扱う領域と思われていることが多いと思います。しかし、実際には脳だけではなく、脊髄、末梢神経を含めた神経全般の疾患を対象にしています。

日本脳神経外科学会としても、「脳神経外科は、脳や脊髄、末梢神経とそれらに関連するすべての病気に対し、予防から社会復帰までを行う専門の医療領域です」とうたっており、近年脊椎脊髄外科、末梢神経外科を扱う脳神経外科医が増えてきています。

当院では、日本脊髄外科学会指導医2名、認定医1名の体制でこれらの疾患の治療にあたっています。治療にあたっては広島大学病院のみでなく、関連病院にも担当医が赴いて外来診察、手術を行っています。

最近5年間の手術件数の推移

当科で扱っている疾患の特徴

脳神経外科で脊椎脊髄疾患、末梢神経疾患を扱っていることの認知度が低いため、手術件数はそれほど多くありません。しかし、他の病院で治療を行ってもよくならない症状や、合併症(持病)があるため手術できないと判断された症例の治療も積極的に携わるように努めています。長年にわたり様々な症状で困っている方の一助となれば幸いです。

また、脊髄腫瘍や脊髄血管障害といった、希少で治療に高度な技術が必要とされる疾患の治療にも積極的に取り組んでいます。当科での手術にはすべて手術用顕微鏡を使用しています。また、ほぼすべての症例に術中神経モニタリングを行っており、手術中の合併症を予防しています。

当科で扱っている代表的な疾患

脊椎変性疾患

頚椎病変

頚椎病変には頚椎症性脊髄症、頚椎椎間板ヘルニア、頚椎神経根症、頚椎後縦靭帯骨化症などがあります。上肢の痛みやしびれで発症することが多いですが、進行すると歩行障害や排せつの障害などが出現することがあります。手術には前方手術と後方手術があります。病態に合わせて適切な手術方法を選択しています。

前方除圧固定術

椎間板と靭帯による脊髄の圧迫を認め、前方から手術を行い、チタン製のケージを挿入しています。

拡大椎弓形成術

後縦靭帯骨化症に対し、後方からドアを開くように骨を開け、チタン製のケージで固定しています。

胸椎病変

胸椎には頚椎と同様に胸椎椎間板ヘルニア、胸椎後縦靭帯骨化症、胸椎黄色靭帯骨化症などが生じます。また、圧迫骨折に対する治療も行っています。

椎弓切除術

胸椎の黄色靭帯骨化症に対して、後方から除圧術を行っています。椎弓とともに骨化した靭帯を除去しました。

腰椎病変

腰椎には腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腰椎すべり症といった変性疾患が多く生じます。下肢の痛み、しびれに加え、間欠性跛行(歩く距離が長くなると足がしびれてくる)といった症状を呈します。保存的治療で警戒することも多いですが、改善しない場合や麻痺、痛みの増悪、排せつの障害などが起こった際に手術を行っています。

すべり症に不安定性(腰椎がぐらぐら動くこと)を伴っている場合は、固定術も行っています。

椎間板ヘルニア摘出

片側アプローチを行い、ヘルニアを摘出しています。強い下肢痛は消失しました。

腰椎後方除圧固定術

不安定性を伴うすべり症に対して、後方から固定術を行いました。骨の位置は矯正され、腰痛、下肢症状は消失しました。

脊髄腫瘍

脊髄には脳と同じように腫瘍ができることがあります。多くは良性腫瘍ですが、悪性腫瘍ができることもあります。脊髄にできる代表的な腫瘍は神経鞘腫、髄膜腫、神経膠腫の3種類で、手術により治療を行うことができます。四肢の運動感覚障害や排せつの障害、呼吸障害などで発症しますが、近年はMRIの普及に伴い、症状がない状態で発見されることもあります。脳と脊髄髄に同時に腫瘍が発生する疾患(神経線維腫症など)に対しては、当科で両方の治療を行うことが可能です。

頚髄髄内腫瘍摘出術

頚髄に発生した上衣腫を全摘出しています。新たな症状の出現なく、5年間再発もありません。

脊髄血管障害

脊髄の血管障害はまれで診断が難しく、原因不明と診断されたり、ヘルニアや狭窄症として不適切な手術を受けてしまうことも多い疾患です。当科では多くの症例の治療を行っており、早期診断、治療を目指しています。

脊髄硬膜動静脈瘻遮断術

脊髄を栄養する血管の奇形に対して遮断術を行いました。手術中の血管撮影で異常血管がなくなったことを確認しています。診断、治療まで時間がかかったため、下肢に強い症状が残存しています。

先天奇形

脳神経外科で扱う代表的な先天奇形として、二分脊椎、脊髄脂肪腫を多く扱っています。妊娠中に二分脊椎が明らかとなった場合は、出産前から説明を行い、治療に関わっています。手術後は成人するまでの長期間追跡し、成長に応じて適切な治療を提案しています。

出生直後に手術を行った脊椎披裂の症例。下肢や肛門に電極を設置し、神経障害を予防しながら手術を行いました。

先天性皮膚洞

皮膚から連続する皮膚洞と脊髄周囲の腫瘍を摘出しています。

当院で手術を行った各種脊髄脂肪腫

脊髄脂肪腫

脊髄脂肪腫

脊髄脂肪髄膜瘤

末梢神経疾患

四肢のしびれ、痛みをきたす疾患として末梢神経障害が挙げられます。脳や脊髄に異常がなかった場合、末梢神経の検査を追加することで原因がわかることがあります。神経伝導検査や神経ブロック、画像診断を積極的に行い、末梢神経障害の診断、治療を行っています。

手根管症候群が代表的ですが、胸郭出口症候群、上殿皮神経痛、足根管症候群といった疾患も取り扱っています。手足のしびれや痛みでお困りの際は、当科にて適切な治療を行うことができる可能性があります。

まず、頭蓋内、脊髄に病変のないことを確認し、神経伝導検査、エコーガイド下の神経ブロックなどを行って確定診断をします。まず各種保存的治療を行いますが、症状が緩和されない場合は、必要に応じて手術を行います。

末梢神経疾患を扱っている医療施設は少なく、遠方からの受診も多くありますので、お困りの際は気軽にお問い合わせください。

足根菅症候群に対する神経ブロック

胸郭出口症候群に対する斜角筋ブロック

神経伝導検査による手根管症候群の診断

当院で治療経験のある末梢神経障害

手根管症候群、肘部管症候群、胸郭出口症候群、足根管症候群、腓骨神経麻痺、上殿皮神経障害、大腿外側皮神経障害、腓腹神経障害

当院で扱っている疾患に関しては、日本脊髄外科学会ホームページにも多くの情報が載っています。受診を考えられる際は、以下のリンクもご利用ください。

日本脊髄外科学会

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